「友達はお金で買えないからね」
子供の頃に誰かから言われた記憶のある方は多いのではないでしょうか。
親であったり教師であったり。
お金で手に入れた関係は偽物で、本物の友情は無償でそこに在るものだと。
レンタルフレンドという業態を営む以上、当店はこの言葉と正面から向き合わなければなりません。
結論から書きます。当店はこの言葉を否定しません。
友達はお金では買えない。その通りだと考えています。ただしこの言葉が「友情は無料である」という意味だとは思っていません。
友情の支払いは「借り」で行われている
友人に話を聞いてもらえば、こちらも聞かなければならない。
愚痴を零せば次は自分が受け止める番が来る。誕生日を祝われたなら覚えておく必要がある。
友情の対価はお金ではなく「借り」で支払われています。
厄介なのはこの通貨に為替相場が存在しない点です。
自分がどれだけ受け取ったのか、どれだけ返せているのか。
正確な残高は誰にも分かりません。請求書が回って来る時期も見えない。
故に大切な相手ほど言えなくなります。
これを話せばこの人を困らせてしまう。先週も聞いてもらったばかりだ。今は向こうも大変な時期だから。
無償の優しさは受け取る際に必ず少しだけ重い。
当店に相談をくださる方の多くは孤立していません。家族も同僚も友人もいます。
周囲に人が居ないのではなく、人が居るのに言えない。当店が向き合っているのはそうした状態です。
これは性格の問題ではなく関係の構造の問題だと考えています。
当店が料金を頂いている理由
「お金を払って友達を作るなんて」という感覚を持たれる方が居ることは承知しています。
当店の考えはこうです。
料金が発生した瞬間に借りが消えます。
「今度は私が聞かなければ」も「この人の時間を奪っている」もそこには生まれません。
だからこそ初めて全てを話せる。
有料だから本音が出ないのではなく、有料だからこそ本音が出る。当店はそう考えて設計しています。
御利用の際に「こんな話をして申し訳ない」と仰る方がいらっしゃいますが、その必要はありません。謝らずに済む時間を用意することこそが料金の中身だからです。
この考え方については当店をどういう意図で作ったかにも記しています。
AIには断った予定が無い
悩みを聞いてもらうだけならば、現在はAIという選択肢があります。二十四時間疲れることなく、こちらの感情を正確に言い当ててくる。共感の言葉の量と質において当店が勝てる領域ではありません。
では人が会うことに何が残るのか。
AIには断った予定がありません。
人が二時間そこに居るということは、その人の有限な人生の二時間を他の誰でもなくあなたに使ったということです。
無限に供給できる優しさは、どれだけ受け取っても「自分に時間を割く価値がある」という証明にはなりにくい。
もう一点、AIにはAI自身の欲求がありません。こちらの感情は完璧に扱ってくれますが、向こうから何かを求めて来ることはない。
どこまで話してもそれは精度の高い鏡であって、二人で居ることにはならないのではないか。当店はそう考えています。
当店のフレンドは疲れます。照れますし言葉に詰まることもあります。その不完全さこそが、相手が本当にそこに居る証拠になる。フレンドの選考で見ているのも話の巧さより、そうした部分です。
当店が用意しているのは器の方です
長くなりましたが最初の言葉に戻ります。
友達はお金では買えません。当店も友情を売っているつもりはありません。
当店が用意しているのは時間の枠と料金と、恋愛にはしないという約束です。言ってしまえば器の方です。
器が公平だからこそ、中に入る話が本物になれる。無償の献身はいつか尽きますし、尽きる前に相手への借りとして積み上がります。
続けられる形にしておくことは当店の商売上の都合であると同時に、お客様を守る為の設計でもあります。
夜、携帯を閉じた後に誰にも言っていない話が一つ残っている。
そうした夜が訪れた時に思い出して頂ければ十分です。

