「知り合いが一人もいない街で、最初の週末が一番きつかった」。
転勤で関西から東京に来たばかりの方が、開口一番そう言ったらしい。フレンドからの報告を読んで、私は少し黙ってしまった。
知り合いゼロの街。その感覚は、想像するのと実際に経験するのとでは重さがまるで違う。
金曜の夜、帰る場所はあるのに帰りたくない
その方は30代の女性だった。仕事のことは詳しく聞いていないけれど、会社の都合で春に東京へ異動してきたと聞いている。
引っ越し自体は問題なく終わった。部屋も整った。職場にも少しずつ慣れた。でも、金曜の夜になるとどうしようもなく気持ちが沈む、と話していたそうだ。
部屋に帰っても誰もいない。当たり前のことだ。一人暮らしなのだから。でもそれまでは地元に友達がいた。金曜の夜に「ごはん行かない?」とLINEを送れる相手がいた。
新しい街にはそれがない。
「帰る場所はあるのに帰りたくない」とその方は言ったそうだ。フレンドがその言葉をそのまま書いてくれていて、私はその一文を何度か読み返した。
家があるのに帰りたくないというのは、住む場所の問題ではない。「待っている人がいない」という静かな重さのことだと思う。
転勤先で友達がいないのは、当たり前のことなのに
転勤や引っ越しで知り合いがいなくなるのは、考えてみれば当然のことだ。誰だってそうなる。
でも「当然のこと」と「平気でいられること」は違う。
新しい街で友達がいないのは自分のせいではない。人付き合いが下手なわけでも、魅力がないわけでもない。
ただ、物理的に移動しただけだ。→話し相手がいないのは、あなたのせいじゃないという話を、以前書きました。
頭ではわかっている。でも金曜の夜に誰にも連絡できない自分を見ると、「やっぱり私には友達を作る力がないんだ」と思ってしまう。そういう方は多いと思う。
実際、転勤がきっかけでこのサービスを知って連絡をくれる方は少なくない。みんな同じようなことを言う。「友達がいないんです」と。
でも私は思う。友達が「いない」のではなく、友達が「ここにはまだいない」だけだと。その二つは意味がまったく違う。
「最初の一人」になれたかもしれない話
さっきの方の話に戻る。
その方がフレンドと会ったのは、東京に来て1ヶ月ほど経った頃だったと思う。カフェで2時間ほど話したらしい。
フレンドからの報告には「最初は緊張されていたけれど、途中から地元の話をたくさんしてくれました」と書かれていた。地元の友達のこと、よく行っていたお店のこと、実家の猫のこと。
それは「相談」ではなかった。ただの雑談だった。
でもその方にとっては、東京に来てから初めて、仕事以外の人間と仕事以外の話をする時間だったのだと思う。フレンドもそう感じたらしく、報告にこう添えていた。「なんとなく、堰を切ったように話してくださった感じがしました」。
この仕事をしていて、ときどき思うことがある。私たちは「友達の代わり」ではないけれど、「最初の一人」にはなれるかもしれない、と。
新しい街で誰とも話せないまま週末を過ごし続けるのと、たった一人でも「この人になら話せる」と思える相手がいるのとでは、日常のしんどさが変わる。少なくとも、私にはそう見える。
地元の友達には言えないこと
もうひとつ、意外に多いのが「地元の友達には転勤先の寂しさを言えない」という話だ。
連絡しようと思えばできる。LINEも電話もある。でも、「寂しい」と言ったら心配をかけてしまう。「楽しくやってるよ」と返すのが精一杯。そういう方がいた。
友達がいないわけではない。連絡先もある。でも「元気じゃない自分」を見せられない。それは距離の問題ではなく、関係性の問題だ。
気を遣わなくていい相手、がんばっている自分を演じなくていい相手。そういう存在が、新しい場所では特に必要になる。
私は別にそれがレンタルフレンドでなくてもいいと思っている。近所のカフェの店員でも、たまたま話が合った同僚でも、なんでもいい。ただ、タイミングとか相性とか、そういうものがうまく噛み合わないことは多い。そのあいだの「つなぎ」として使ってもらえるなら、このサービスには意味がある。
対面じゃなくても、始められる
転勤先で利用を考えている方に、一つだけ伝えておきたいことがある。
対面で会うのがハードルが高いなら、通話から始めてもいい。引っ越したばかりで土地勘もない、知らない場所で知らない人と会うのは不安だ、という気持ちはよくわかる。
→通話だけで始めるという選択肢について、こちらに書きました。
実際、転勤のタイミングで通話コースを選ぶ方はいる。引っ越し作業が落ち着いた夜に、30分だけ電話で話す。「今日こんなことがあって」という他愛のない報告。それだけでも、新しい街での日々が少し軽くなるのだと、ある方が教えてくれた。
地元に戻ったら使わなくなるかもしれない。それでいい
転勤がきっかけで利用を始めた方の中には、地元に戻ったり新しい土地に馴染んだりして、自然とサービスから離れていく方がいる。
それでいいと思っている。
環境が変わって一時的に孤立した時期を乗り越えるために使ってもらえたなら、それはこのサービスがちゃんと機能したということだ。ずっと使い続けてもらうことがゴールではない。
ただ、ふと思い出したように「またお願いします」と連絡が来ることもある。次の転勤先で、とか。生活が変わったタイミングで、とか。
そのときにまた「お待ちしています」と言える状態であること。それが、私にとってこの仕事を続ける理由の一つになっている。
新しい街で、知り合いが一人もいなくて、金曜の夜がしんどい。もしそんな状態がいま続いているなら、少しだけ知っておいてほしい。それは、あなたに何かが足りないからではない。ただ、環境が変わっただけだ。
そして環境が変わったときに頼れる場所は、思っているよりもある。

