「お金を払ってるから、気を遣わなくていい。だから楽なんです」
3回目の利用で、ある方がふとこぼした言葉。最初は複雑だった。
でもその意味がわかったとき、レンタルフレンドの料金について、私の考え方は少し変わった。
「だから楽なんです」と笑った方のこと
その方は、3回目の利用のときにふとこう言った。
「お金を払ってるから、気を遣わなくていいんですよね。だから楽なんです」
私は一瞬、言葉に詰まった。
正直に言うと、最初は少し複雑な気持ちだった。お金を払っているから楽、という言葉を、どう受け取ればいいのかわからない。
サービスを提供している側としては、もう少し違う理由で「楽」と言ってほしい気持ちが、たぶんどこかにあったのだと思う。
でもその方は続けた。
「友達と会うのって、すごく気を遣うんです。帰ったあと、今日の自分の発言を全部振り返って、あれは大丈夫だったかなって考えちゃう。楽しかったはずなのに、家に帰ると疲れてる」
ああ、と思った。この方が「楽」と言っているのは、サービスの質とか、フレンドの対応とか、そういう話ではなかった。
もっと手前の、もっと根本的なことだった。
友達との時間が「重い」という人がいること
内向的な方にとって、人と会うこと自体がエネルギーを使う行為だというのは、この仕事を始めてから何度も聞いてきた。
でも、それだけではない。
友達との関係には、目に見えない「貸し借り」がある。
- 今日はこの子が話を聞いてくれたから、次は私が聞かなきゃ。
- 誘ってもらったから、今度はこっちから誘わないと。
- お土産をもらったから、何か返さないと。
その一つひとつは小さい。でも、内向的な方にとっては、その小さな積み重ねが、いつの間にか重くなる。
ある方は「友達が好きなのに、LINEの通知が怖い」とおっしゃっていた。
返さなきゃと思うのに、何を返せばいいかわからなくなる。
既読をつけたら返さないわけにいかない。でも今日はもう、誰かのために言葉を選ぶ余力がない。
これは怠けているのではない。ただ、人との関係を丁寧にしようとしすぎて、疲れ果てているだけだ。
そういう方が、この仕事をしていると本当に多い。
お金が「対等」を作るという発見
「お金を払ってるから気を遣わなくていい」という言葉の意味が、少しずつわかってきた。
お金を払うという行為が、関係をシンプルにしているのだと思う。
友達関係には、暗黙のルールがたくさんある。
話を聞いてもらったら、次は聞く番。食事をおごってもらったら、次は私が出す番。その循環が自然にできる人はいい。
でもそれが苦手な人にとっては、誰かと一緒にいること自体が、ずっと借りを作り続けている感覚になる。
料金を払うことで、その貸し借りはゼロだ。
「聞いてもらった分、何かお返ししなきゃ」がなくなる。だから、ただ話すことに集中できる。ただ黙っていてもいい。ただ一緒にいることだけに、意識を向けられるようになった。
これは私にとって、利用者の方に教えてもらった発見だった。
「お金で友達を買う」への後ろめたさについて
「ふたりしずかに」の利用を検討している方の中には、「お金を払って友達をレンタルするなんて」という気持ちを抱えている方がいると思う。
この話はいずれ別の記事で詳しく書こうと思っているけれど(→料金についての本音はこちらで書いています)、ここでは一つだけ。
お金を払うことに後ろめたさを感じる方は、たいてい、人間関係をとても大切にしている方だ。
大切にしているからこそ、「お金で買う」という行為に抵抗がある。
友達との関係は、お金とは無関係の純粋なものであるべきだと思っている。その感覚は、私は正しいと思う。
でも、同時にこうも思う。
美容院で髪を切ってもらって、後ろめたいと思う人はあまりいない。
マッサージを受けて「お金で身体のケアを買ってしまった」と自分を責める人もいない。
自分が元気でいるために必要なことにお金を使う。それだけのことだ。
心が疲れたときに、誰かに話を聞いてもらう。それも同じなんじゃないかと、私は思っている。
ただ、こういう話を自分でするのは少し気恥ずかしい。
お金をもらっている側の人間が言っても、ポジショントークに聞こえてしまうかもしれない。
だから、あの方が「だから楽なんです」と笑ってくれたことが、私にはとても大きかった。
気を遣わないでいられる時間の値段
利用料金のことを考えるとき、私はときどき不思議な気持ちになる。
うちのサービスに限った話ではないけれど、レンタルフレンドの料金は「誰かの時間を買う値段」だと思われがちだ。
でも、あの方の言葉を聞いてから、少し違う見え方をするようになった。
あれは「気を遣わないでいられる時間」の値段なのかもしれない。
予約ボタンを押すまでに1ヶ月かかった方もいる(→その方の話はこちらに書きました)。
迷って当然だと思う。お金を払って人と会うという行為に、すんなり納得できる人のほうが少ないだろう。
でも、何度も言うけれど、そこで迷っている方は、人間関係を雑に扱えない方だ。
雑に扱えないから、友達との時間でも疲れる。雑に扱えないから、「お金で友達」という言葉に引っかかる。
その引っかかりを持ったまま、それでもこのページを読んでいるあなたのことを、私はおかしいとは思わない。
あの方がくれた「だから楽なんです」は、たぶんそういう人たちへの、一番正直な言葉だったと思う。
そのことを書いておきたかった。ただ、それだけです。
→次の話:帰り道に泣いた方の話

