【オーナーコラム#10】「友達には言えないことがある」と泣いた女性の話

【オーナーコラム#10】「友達には言えないことがある」と泣いた女性の話

「友達がいるのに、誰にも相談できないんです」

そう言ったあと、その方はしばらく黙っていました。

電話越しに、息を整えているのがわかりました。泣いているわけではなかった。泣く手前の、あの苦しい静けさ。私はただ受話器を耳に当てたまま、何も言わずに待っていました。

少し経って、ぽつりと続きが出てきました。

「仲のいい友達はいるんです。ランチもするし、LINEもする。でも、この話だけはできない」

その「この話」が何なのかは、ここには書きません。ただ、聞いていた私の胸が詰まったのを覚えています。

目次

近い人ほど、言えないことがある

友達がいないわけじゃない。相談できる相手がいないわけでもない。それでも、言えないことがある。

この話をすると、不思議に思う方もいるかもしれません。

友達がいるなら相談すればいいじゃないか、と。でも、この仕事をしていると、その「言えなさ」の正体が少しずつ見えてきます。

「話したら関係が変わってしまう」という恐怖

ある方はこうおっしゃっていました。「友達にこの話をしたら、きっと態度が変わる。

心配されるのが怖いんじゃなくて、今の関係が壊れるのが怖い」。

それを聞いたとき、私は何も返せなかった。

たぶん、わかったからです。大事な人だからこそ打ち明けられない。

嫌われるとかそういうことじゃなくて、「同じ目線でいてくれなくなるかもしれない」。

その不安は、孤独とはまた違う痛みなんだと思います。

家族の問題、お金のこと、身体のこと、性のこと。友達との会話に持ち込んだら、空気が変わってしまう話題は確かにある。

「重い話をしてごめんね」と謝ることになるのが目に見えていて、だから口をつぐむ。

そういう方が、このサービスに連絡をくれることがあります。

「自分でなんとかしなきゃ」が長すぎた人

もうひとつ、よく感じることがあります。相談できる人がいないのではなく、「相談していいと思えない」という方の存在です。

「こんなこと人に話すことじゃない」「自分で解決すべきだ」。そうやってずっと抱え込んできた方。その年数が5年、10年という方も珍しくありません。

私が驚くのは、その方たちが決して弱い人ではないということ。

むしろ、ちゃんとしている。仕事もしていて、日常も回せている。

でも、夜になると考え込んで眠れない。休日に一人でいると涙が出る。

ふと思うんです。ちゃんとしているからこそ、誰にも見せられない部分が膨らんでいくのかもしれない、と。

うまく言えないのですが、そういう方に「弱さを見せてもいいですよ」と言うのは簡単です。

でも、それは10年分の「なんとかしてきた自分」を否定することにもなりかねない。

だから私はそうは言いません。ただ、「ここでは話してみてもいいかもしれませんよ」とだけ伝えます。

「第三者」だから話せること

これは私の感覚ですが、人が本当につらいことを打ち明けられる相手は、「近い人」ではないことが多い気がしています。

友達でも家族でもない、名前も立場も利害関係もない相手。そういう存在に、ぽろっと本音が出る。

カウンセリングに行けばいいのかもしれない。でも「カウンセリングに行くほどではない、でも一人はしんどい」という声も、本当に多く届きます。

その「間」についてはこちらで書きました

私たちはカウンセラーではないし、治療はできません。でも、「聞く」ことはできる。それだけでいいときが、あるんだと思います。

あの電話のあと

冒頭の方の話に戻ります。

30分くらい話されたあと、その方は「すみません、こんな話をして」と言いました。

私は「いえ、話してくれてよかったです」と返しました。月並みな言葉だったと思います。

でも、しばらく間があって、「ありがとうございます」と言ってくれた。

その声が、電話の最初とは少し違っていました。力が抜けたというか、呼吸が深くなったというか。

劇的なことが起きたわけではありません。問題が解決したわけでもない。

ただ、誰にも言えなかったことを声に出した。それだけのことで、人は少し楽になれるのかもしれない。

私にはまだ、その仕組みがよくわかりません。でも、この仕事をしていてそういう場面に何度も立ち会ってきたのは事実です。

家族の話を切り出して、声が震え始めた方もいました。

その方のことはまた別の機会に書こうと思います

ここまで読んでくれているあなたにも、もしかしたら「友達には言えないこと」があるかもしれない。あるいは、あるけれど自覚していないだけかもしれない。

それは恥ずかしいことじゃないです。たぶん、友達がいるからこそ出てくる悩みなんだと思います。

→ 次の話:何も話さなかった2時間を「最高でした」と言われたこと

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