【オーナーコラム#7】私がこのサービスで絶対にやらないと決めたこと

【オーナーコラム#7】私がこのサービスで絶対にやらないと決めたこと

サービスを立ち上げる前に、ノートを一冊買った。何を提供するか、ではなく、何を絶対にやらないか。

それを書き出すためだった。

たぶん、世の中には「やること」を掲げるサービスのほうが多いと思う。でも私は逆から入りたかった。

理由はうまく言えない。ただ、自分自身が誰かに「やられて嫌だったこと」のほうが、記憶にはっきり残っていたから。

あの夜、テーブルに向かってペンを握ったときの感覚を、今でも覚えている。

目次

「元気出して」と言わない、と書いた

最初に書いたのは、これだった。

  • 「元気出して」
  • 「前向きにいこう」
  • 「大丈夫だよ」

悪意がないのは知っている。言う側は本当に相手を思って口にしていることが多い。でも、受け取る側にとっては、それが重荷になることがある。

私自身がそうだった。しんどいときに「元気出して」と言われると、元気を出せない自分がさらに情けなくなる。

笑えないのに笑おうとして、余計に疲れた。そういう経験が、何度もあった。

だからフレンドには、利用者の方を「明るくしよう」としないでほしいと伝えている。

暗い顔のままでいい。泣いていても構わない。沈んだ声のままでいい。その状態を、そのまま受け止めること。それだけでいいと。

これは私の感覚だけど、人は「変わらなくていい」と思えたときにだけ、自分から変わり始める気がする。

アドバイスを封じたかった理由

二番目に書いたのが、アドバイスの禁止だ。

人の話を聞いていると、つい「こうすればいいのに」と思うことがある。私もそうだ。特に相手が困っているときほど、何か役に立つことを言いたくなる。

その気持ち自体は優しさだと思う。でも、その優しさが相手を追い詰めることがある。

多くの場合、相手は答えを求めていない。

ふと別の話を思い出す。昔、友人が仕事の愚痴を話してくれたとき、私は良かれと思って「転職したら?」と言った。友人は黙り込んだ。そのあと、彼はもう仕事の話をしなくなった。

あのとき彼が欲しかったのは解決策じゃなく、ただ「大変だったね」の一言だったんだろう。そのことに気づいたのは、ずいぶん後だった。

あの経験が、ずっと引っかかっていた。

「ふたりしずかに」のフレンドは、カウンセラーではない。医師でもないし、コーチでもない。

カウンセリングとの違いについてはこちらに書きました。私たちの役割は、あくまで「聞く人」だ。

聞いて、うなずいて、ときどき「それは大変でしたね」と返す。それだけ。

「それだけ?」と思うかもしれない。でもその「それだけ」が、どれほど貴重か。

この仕事を始めてから、私は何度も思い知らされている。

沈黙を怖がらない

三番目に書いたのは、「無理にしゃべらせない」ということ。

これは正直、フレンドにとっても難しい。目の前に人がいて、沈黙が続くと、何か話さなきゃと焦る。それは自然な反応だ。私だってそうなるときがある。

でも、黙っている時間にも意味がある。

言葉にならない感情を、頭の中で整理している時間。涙をこらえている時間。

ただ隣に誰かがいるということを、体で確かめているような時間もある。そういう沈黙は、壊してはいけないと思う。

世の中は「しゃべること」に価値を置きすぎている気がする。コミュニケーション能力という言葉が、いつのまにか「上手にしゃべれること」と同義になってしまった。

でも本来、コミュニケーションには「黙って一緒にいる」ことも含まれるはずだ。

だからフレンドには「沈黙が来ても、焦らなくていい。相手のペースに合わせて」と繰り返し伝えている。

「やらないこと」で信頼はつくれるか

ここまで書いてきて、自分でも思う。

「やらないことリスト」なんて、サービスの紹介としてはずいぶん地味だ。

普通なら「こんなことができます」「こんな資格を持ったスタッフがいます」と書くところだろう。

安全性や運営体制のことはこちらにまとめていますが、この記事ではあえてそういう話はしない。

私が信頼できると思うサービスは、何をしてくれるかより、何をしないかが明確なところだ。たとえば病院。

「あなたの同意なしに治療はしません」と最初に言ってくれる医師を、私は信頼する。

できることの列挙より、しないことの宣言のほうが、人を安心させることがある。

レンタルフレンドという業態は、まだ世の中にあまり馴染みがない。だから不安に思うのは当然だと思う。

  • 「どんな人が来るのか」
  • 「変なことを言われないか」
  • 「無理やりテンションを上げさせられないか」

そういう心配を抱えながら、それでもこのページまでたどり着いてくれた方がいるとしたら。

その慎重さは、私にとって、とても自然なものに映る。

私たちは、あなたを変えようとしない。明るくさせようともしない。アドバイスを押し付けることも、沈黙を急かすこともしないと決めている。

それが、このサービスの一番の約束だ。

あのノートに書いたことは、今でも変わっていない。

ペンのインクは少しかすれてきたけれど、中身はそのまま残っている。

たぶんこの先も、書き足すことはあっても、消すことはないだろう。

そうやって「やらないこと」を守り続けていたら、ある日、利用してくださった方から思いもよらない言葉をもらった。そのときの話は、次に書きます

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