中学2年生の約17人に1人が家族のケアを担い、友人関係を育てる時間を失っている。ヤングケアラーの「友達がいない」は性格ではなく環境の問題だ。
レンタルフレンド運営者が、孤立の構造を整理し、レンタルフレンドと無料支援の使い分けについて正直に書いたコラム。
「友達がいない」のは、あなたのせいじゃない
中学2年生の約17人に1人が、家族の介護や世話を担っている。
厚生労働省と文部科学省の調査で出たこの数字を初めて見たとき、私は少し息が止まった。1クラスに1〜2人。つまり、どの教室にもいる。でも、ほとんどの場合、周囲は気づかない。本人すら自覚していないことがある。
「ヤングケアラー」とは、家族の介護・看病・きょうだいの世話・家事・通訳などを日常的に担っている子ども・若者のことだ。
2024年6月には子ども・若者育成支援推進法が改正され、ヤングケアラーが法律上の支援対象として初めて明記された。「家族の介護その他の日常生活上の世話を過度に行っていると認められる子ども・若者」という定義がようやくできた。
ようやく、だ。
この仕事をしていると、「友達がいない」という言葉に出会う場面がある。その背景は人によって違うけれど、家庭のケアを抱えている方の場合、孤立のかたちが少し独特だと感じてきた。
性格の問題でもコミュニケーション能力の問題でもない。友人関係を育てるための時間と余裕が、生活構造の中から削り取られている。
放課後の寄り道、休日の遊び、どうでもいいLINEのやり取り。友達との関係はそういう「用事のない時間」で育つ。でも学校が終われば家に直行し、ケアに時間を使い、夜は疲れて眠る。そんな毎日が続けば、関係が深まる前に距離ができる。「誘っても来ないから」と自然に声がかからなくなる。本人の意思とは無関係に。
ある方がこう言っていた。「友達がいないんじゃなくて、友達を育てる時間がなかっただけだと思う」と。
私もそう思う。
ヤングケアラーに孤立が起きやすい三つの壁
この仕事で話を聞いてきた中で、ヤングケアラーの方が「友達いない」と感じる背景には、「言えない」「会えない」「頼れない」という三つの壁があると感じている。
一つ目は「言えない」。家庭の状況を話すことへの不安だ。話した瞬間に空気が変わるのが怖い。同情されたくない。噂になったら困る。家族のことを外で話すこと自体が裏切りのように感じる。「週末なにしてた?」と聞かれるだけでしんどいという声もあった。「家のこと」と答えると会話が止まり、詳しく話すと重くなり、笑って誤魔化すと嘘をついている気分になる、と。
二つ目は「会えない」。学校、バイト、帰宅後のケア。この三つで一日が埋まると、部活も放課後の寄り道もできない。急な呼び出しでドタキャンが増えると、断る側は申し訳なさで自己否定が強まり、誘う側は遠慮して距離を置くようになる。関係が薄くなる悪循環が始まる。
三つ目は「頼れない」。これは支援につながりにくいという構造的な問題だ。こども家庭庁の調査によれば、ヤングケアラーの約8割が「相談経験がない」と回答している。
理由として最も多いのは「相談するほどの悩みではないと思うから」。本人が状況を「普通」だと思い込んでいるケースも多い。また、先生に話しても忙しそう、児童相談所に通報されたら家族がバラバラになるかもしれないという不安もある。
さらに厄介なのは、ヤングケアラーの方は家族への責任感が強い人が多いということだ。友達と遊ぶ時間=家族を置いていく時間、という感覚になり、自分だけ楽をしていいのかと責めてしまう。罪悪感が外出や交友のブレーキになる。
この三つが重なると、孤立は構造的に固まっていく。努力不足ではなく、構造の問題だ。
孤立が深まっているかもしれないサイン
もしあなた自身がヤングケアラーで、あるいは身近にそういう人がいるなら、以下のような変化が続いていないか振り返ってみてほしい。
- LINEの通知が来ても返す気力がわかない。
- 学校で笑えない、雑談がしんどい、休み時間が苦痛になっている。
- 眠れない、食欲が落ちた、頭痛や腹痛が増えた。
- 遅刻や欠席が増えた、成績が急に落ちた。
- 「どうせ自分なんて」と考える時間が増えた。
- 家の外に出ること自体が怖い。
- 外出した後に強い罪悪感がある。
こうしたサインが複数当てはまるなら、負担はすでにかなり大きくなっている可能性がある。「まだ大丈夫」と思いたい気持ちはわかるけれど、それは限界のサインを見逃しているだけかもしれない。
レンタルフレンドという選択肢について、正直に書く
ここから先は、レンタルフレンドのサービスを運営している人間として書く。だから、ポジショントークだと感じる部分があるかもしれない。それでも、できるだけ正直に書きたい。
レンタルフレンドは、ヤングケアラーの孤立を一気に解決する魔法ではない。家庭の状況が変わるわけでも、友達が突然できるわけでもない。
ただ、一つだけはっきり言えることがある。家庭の利害関係からも、学校の人間関係からも離れた場所に、「話しても安全な相手」を確保できるという点は、ヤングケアラーの方にとって意味があると私は考えている。
なぜそう思うかというと、ヤングケアラーの孤立には「話す相手がいない」だけでなく「話していい場所がない」という問題がある。家族には心配をかけたくない。
友達には重すぎる話だと思われたくない。先生に言えば大事になるかもしれない。そうやってどこにも出口がないまま、一人で抱え込み続ける。
レンタルフレンドなら、話す内容も話さない内容も自分で選べる。家のことをざっくり伝えてもいいし、一切触れなくてもいい。「最近ちょっと疲れてて」だけで十分だ。
守秘義務があり、距離感のルールも明確だから、友達関係のように「相手にも同じだけ返さなきゃ」という負担が生まれにくい。
もう一つ、レンタルフレンドがヤングケアラーに向いていると感じる理由がある。時間と場所の自由度が高いことだ。
通話やビデオ通話なら家を空けずに済む。30分から利用できるサービスもある。夜はケアが忙しいなら平日の昼間を使えるし、移動が負担なら完全オンラインでもいい。
「もっと外に出よう」「もっと人と会おう」ではなく、今の生活を壊さない範囲で少しだけつながりを持つ。その設計ができるのが強みだと思う。
具体的にどう使えるか
ヤングケアラーの方がレンタルフレンドを使う場合、いくつかの使い方がある。
まず、純粋な話し相手として。家のことを誰かに聞いてほしいときもあれば、逆に家のことを一切忘れて趣味の話や好きなドラマの話をしたいときもある。どちらでもいい。フレンドの側は、どんな話題でも否定せずに聞くことを前提にしている。
次に、気分転換の外出同行。久しぶりに外に出るのが怖い、一人では足が向かないという方には、散歩やカフェ、買い物への同行もできる。「外に出る練習」としての利用は、思ったより多い。
それから、勉強の付き添い。ヤングケアラーの方の中にはケアの負担で学習時間が減り、成績が落ちている人もいる。自習の隣にいてくれるだけでいい、という形で利用する方もいる。作業通話で一緒に勉強する使い方もある。
初回の利用で、すべてを打ち明ける必要はまったくない。呼ばれたい名前、苦手な話題、外出できる時間帯、連絡の頻度。それだけ伝えれば十分だ。「今日は30分だけ通話」「カフェで1時間だけ」など、小さく始めるほうが続けやすい。
ただし、未成年の方は利用規約や保護者同意の要否を必ず事前に確認してほしい。これは安全のために譲れない部分だ。
費用のことと、レンタルフレンド以外の選択肢
正直に書く。レンタルフレンドには費用がかかる。時給制が多く、交通費が別途かかるサービスもある。ヤングケアラーの方は経済的に余裕がないケースも多いから、頻繁に使い続けるのが現実的でない場合もある。
だからこそ、無料で使える支援を並行して知っておいてほしい。
まず、学校のスクールカウンセラー。予約制が多いけれど、無料で相談できる。話したことが勝手に親に伝わるわけではないし、児童相談所に即通報されるわけでもない。
次に、こども家庭庁のヤングケアラー相談窓口。全国の自治体ごとに窓口が整備されつつある。電話やLINEで匿名・無料で相談できるところもある。
こども家庭庁のサイト(kodomoshien.cfa.go.jp/young-carer/consultation/)から、自分の地域の窓口を検索できる。
それから、子ども・若者向けのNPO。ヤングケアラー協会や日本財団のヤングケアラー支援プログラムなど、無料で利用できるサポートがある。オンラインのピアサポートや、同じ立場の人とつながれる場を提供しているところもある。
チャイルドライン(0120-99-7777)は18歳以下が対象で、匿名・無料で電話相談ができる。24時間子供SOSダイヤル(0120-0-78310)も年中無休で対応している。
レンタルフレンドは、こうした無料の支援につながるまでの「あいだ」に立つものだと私は思っている。いきなり相談窓口に電話するのはハードルが高い。
でも、まず「誰かと話す」という体験を一度してみることで、「頼る」ことへの抵抗感が少し下がる。そのきっかけとしてレンタルフレンドが機能するなら、それだけで十分に意味があるんじゃないか。
つながりは一本だけだと危うい。レンタルフレンド、学校の相談、自治体の窓口、NPO。細くてもいいから複数の糸を持っておくこと。それが孤立をほどく一番確かな方法だと、この仕事を通じて感じている。
友達を「育てる時間」がなかっただけだということ
この記事ではヤングケアラーの孤立について、問題の構造とレンタルフレンドの使い方を中心に書いてきた。
最後に、一つだけ。
「友達がいない」と検索してこの記事にたどり着いた方がいるかもしれない。もしそうなら、知っておいてほしいことがある。友達がいないのは、あなたの性格のせいでも、努力が足りないせいでもない。
友人関係を育てるための時間が、あなたの生活の中から構造的に奪われてきただけだ。
中学2年生の17人に1人。あなたと同じような状況にいる人は、想像よりずっと多い。ただ、みんな声を出さないから見えないだけだ。
状況をすぐに変えることは難しいかもしれない。でも、つながりを取り戻す方法は一つじゃない。30分の通話でもいい、匿名の相談でもいい、このコラムを読んでいるこの瞬間だって、「外とつながろうとしている」ということだ。
その一歩は、思っているより大きい。

