「外に出なくてもいい、まだ」
ある方からの予約メッセージに、そう書いてあった。
「外に出なくてもいい、まだ」。その「まだ」が妙に引っかかって、私はしばらくその画面を見ていた。
たぶんその方は、いつかは対面で会いたいと思っている。
でも今はまだ無理だ、ということだったんだと思う。
通話コースを選んでくれた方だった。
玄関のドアが、重い日のこと
レンタルフレンドのサービスを調べている方の多くは、たぶん対面のイメージを持っていると思う。
カフェで向かい合って、お茶を飲みながら話す。散歩しながら横並びで歩く。そういう場面。
でも、それができない日がある。
身支度をするのがしんどい日。電車に乗るのがしんどい日。そもそも玄関のドアを開けるのに力がいる日。そういう日がある方に、「まず会いに来てください」と言うのは、私には違う気がした。
このサービスに通話コースを作ったのは、開業からそう遠くない時期だった。
最初から計画していたわけではなくて、何人かの方とやりとりする中で「会いたいけど出られない」という声に触れて、じゃあ声だけでもやってみようか、と始めたのが正直なところだ。
あまり格好のいい理由ではない。でも、結果としてこれが必要だった方が、たくさんいた。
声だけの距離感で、救われる人がいる
オンラインの通話で話すのと、対面で話すのは、やっぱり違う。
表情が見えない。空気感が読みにくい。沈黙が対面よりも重く感じることもある。
フレンド側も、通話のほうが気を遣う部分はあると聞いている。
でも、ある方にこう言われたことがある。
「顔が見えないほうが、話せることがありました」
それは、私にとって発見だった。対面のほうが良いサービスを提供できると、どこかで思い込んでいた。でもそうじゃない方がいる。
相手の顔が見えることがプレッシャーになる方がいる。目を合わせること自体が負担になる方がいる。
考えてみれば当然のことだった。内向的な方のためのサービスをやっていて、対面が最善だと決めつけるのは矛盾している。
そのことに気づかせてくれたのは、通話を選んでくれた方たちだ。
→夜の電話で「おやすみ」を言い合うだけの時間、という話も書いています
通話15分、500円から始まるもの
うちの通話コースは、初回限定で15分500円から用意している。
15分。短いと思うかもしれない。
でもこの15分には、ちょっとした意味がある。
15分なら、合わなかったときのダメージが小さい。金額的にも、時間的にも。
「試してみたけど、やっぱりちょっと違った」となっても、500円と15分で済む。
レンタルフレンドというサービスそのものが自分に合うかどうかを、最小限のリスクで確かめられる。
そういう設計にしたかった。
ある方は、この15分の通話のあとに「声を聞いただけで、なんだか力が抜けました」とメッセージをくれた。
15分で何が変わるんだろうと正直思っていた私のほうが、認識を改めさせられた。
もちろん、15分では全然足りないという方もいる。30分、60分、それ以上の通話コースもある。自分のペースで、自分に必要な長さを選んでもらえればいい。→予約から当日までの全体の流れはこちらに書いています
通話のあとに、対面に来てくれた方のこと
これは余談かもしれないけれど、ちょっと嬉しかった話をさせてほしい。
通話コースを3回ほど利用したあと、「今度は対面で会ってみたいです」と言ってくれた方がいた。
最初のメッセージには「外に出るのが怖い」と書いてあった方だ。
対面の日、カフェで初めて顔を合わせたとき、フレンドが「電話の声と同じですね」と言ったらしい。その方は少し笑って、「そうですか、よかった」と返したと聞いた。
通話が対面の練習になったとか、ステップアップしたとか、そういう大げさな話にするつもりはない。
ただ、声を先に知っていることで、会うことのハードルが少し下がったのかもしれない。それだけのことだと思う。
でも「それだけのこと」が、この方にとってはとても大きかったんじゃないかと想像する。
外に出なくても、つながれる
最近ふと思うことがある。
レンタルフレンドのオンライン利用が増えてきた背景には、コロナ以降の生活様式の変化もあるのだと思う。
でもそれだけではなくて、「外に出ることそのものが負担になっている人」がもともと一定数いて、ただ可視化されていなかっただけなんじゃないかと。
外に出られないから誰にも会えない。誰にも会えないから話す相手がいない。話す相手がいないから、余計に出られなくなる。その循環を、どこかで一回断ち切れたらいいと思っている。
通話はそのための入口になりうる。
もちろん、通話のまま続けてもいい。対面に移行する必要はない。自分の部屋のベッドの上から電話して、パジャマのままで30分話して、そのまま寝る。そういう使い方でいい。
身支度しなくていい。電車に乗らなくていい。交通費もかからない。
ただ、電話の向こうに誰かがいる。それだけで、夜の質が変わるという方がいる。
冒頭の「外に出なくてもいい、まだ」と書いてくれた方は、今はときどき対面で会っている。でも今でもたまに通話を選ぶ日がある。「今日は外に出る元気がないので」と正直に言ってくれる。
その正直さに、私はいつも少しほっとする。無理をしていないんだな、と思えるから。
外に出なくてもいい。声だけでも、つながることはできる。それを知っておいてもらえたら、少し気持ちが楽になるかもしれない。
少なくとも私は、そう思ってこのコースを続けている。
ここから先は、少し話が変わる。
実際にフレンドと過ごした時間がどんなものか、私が見てきた風景を書いていこうと思う。

