「このまま続けたら、この人がいないとダメになりそうで」
ある方がそう言ったのは、3回目の利用のあとだった。
フレンドとカフェで2時間ほど話して、会計を済ませて、帰り道にLINEでメッセージをくれた。
楽しかったです、ありがとうございました、という文面のあとに、少し間があって、その一文が続いていた。
私はしばらくスマホを見つめていた。なんと返せばいいのか、すぐにはわからなかった。
「依存が怖い」と言える人のこと
この仕事を続けていると、同じ言葉を何度か聞く。
- 「依存しちゃいそうで怖い」
- 「ハマりすぎたらどうしよう」
予約の前にそう聞いてくる方もいるし、何度か利用したあとにふと漏らす方もいる。
正直に書く。
この問いに対して、私は「大丈夫ですよ、そんなことにはなりません」とは言えない。依存のリスクがゼロだとは、私にも言い切れないからだ。
ただ、ひとつだけ思うことがある。「依存しそうで怖い」と自分で言える人は、もうその時点で自分を客観的に見ている。その怖さを感じ取れること自体が、ブレーキになっている。私はそう思っている。
「頼ること」と「依存すること」の境目
ここはたぶん、私もまだうまく言葉にできていない部分だと思う。
ある方は、月に1回のペースでフレンドと会っていた。毎回同じフレンドを指名して、カフェで1時間半くらい話をする。
仕事のこと、家族のこと、特にテーマを決めずに、そのときに頭にあることを話す。その方が「これって依存ですかね」と聞いてきたことがある。
私はそのとき、少し考えて「美容院に毎月行くのと似ていませんか」と返した。
たぶん正解ではなかったと思う。でもその方は少し笑って「たしかに、髪を切りに行くのに罪悪感はないですね」と言ってくれた。
人に頼ることを「弱さ」だと思っている方は多い。
でもこの仕事をしていると、頼れる場所を自分で見つけて、自分で予約して、自分の足でそこに行く人が「弱い」わけがないと感じる。→その話はこちらで書いています
ただ、これは私の感覚であって、世間一般の定義とはずれているかもしれない。話し相手をお金で確保することに、後ろめたさを感じる人がいるのもわかる。
友達をレンタルするなんて、と自分を責めている方がいるのもわかっている。
その気持ちを「考えすぎですよ」とは言いたくない。
運営として正直に話すこと
レンタルフレンドは万能のサービスではない。
たとえば、精神的にとても辛い状態にある方には、フレンドとの対話だけでは足りないことがある。医療やカウンセリングが必要な場面もある。うちのフレンドには専門資格を持つ人もいるけれど、あくまで「話し相手」であって、治療者ではない。
それから、合わない方もいると思う。「話を聞いてもらう」ということ自体にピンとこない人もいるだろうし、お金を払って人と会うことにどうしても抵抗がある方もいる。それは悪いことではなくて、単純に合う・合わないの問題だ。
こういうことを書くと、自分のサービスの宣伝としてはマイナスなのかもしれない。でも、ここで嘘をついたら意味がないと思っている。
私たちが気をつけていること
依存のリスクについて、運営として何もしていないわけではない。
「ふたりしずかに」では、フレンドに対して「利用者の方が自分の力で日常に戻っていける関係を意識してほしい」と伝えている。具体的には、利用者の判断を尊重すること。
「次はいつ来ますか?」と運営側から促さないこと。利用頻度について、利用者が自分で決められる環境を保つこと。
ふと思い出したけれど、以前あるフレンドが「今日の方、前回より表情が明るかったです」と報告してくれたことがある。
それを聞いて嬉しかったと同時に、「じゃあもう少し間隔を空けても大丈夫かもしれない」と考えた自分がいた。嬉しいのに手放すことを考える。この感覚は、たぶんこの仕事特有のものだと思う。
「卒業」していく人がいること
依存の話をするなら、これも正直に書いておきたい。
利用を続けるうちに、自分のペースを取り戻して、自然と来なくなる方がいる。最後に「もう大丈夫そうです」とメッセージをくれる方もいれば、特に何も言わずにフェードアウトする方もいる。→実際に卒業された方の話はこちらに
どちらも、私にとっては同じくらい嬉しい。
サービスを長く使い続けてもらうことが目的ではない。
これは経営者としては矛盾しているのかもしれないけれど、利用者がここを必要としなくなることが、一番いい結果だと私は思っている。
そう思えなくなったら、この仕事を続ける資格はないとも思う。
「怖い」のままでいい
冒頭の方には、こう返した。「その気持ち、おかしくないと思います。怖いまま使ってもらって構いません」。
たぶん、もっと安心できる言葉を求めていたのだと思う。でも私にはそれしか言えなかった。
依存が怖いという感覚は、自分を大事にしたいという気持ちの裏返しだと思う。
だから、その怖さを消す必要はない。怖いまま、それでもちょっと話を聞いてもらいたいと思ったときに、使ってもらえればいい。
どうせ私は人に頼るのが下手だから。そう思っている方がいるかもしれない。でも、この文章をここまで読んでいるということは、たぶん、誰かに話を聞いてもらいたい気持ちがどこかにある。
その気持ちを、私は否定しない。
次は、もうひとつよく聞かれること。お金の話について、正直に書こうと思う。→料金の話も正直に書きます

