【オーナーコラム#35】人を「頼る」ことが「弱さ」じゃないと気づけた方のこと

【オーナーコラム#35】人を「頼る」ことが「弱さ」じゃないと気づけた方のこと

「すみません」が口癖だった方がいた。お時間いただいてすみません、こんな話してすみません。

全部、謝る必要のないことだった。人に頼ることを「迷惑」だと思い込んでいた方が、あるとき職場で「手伝ってほしい」と言えた。

その一言に至るまでの、小さな話を書きます。

目次

「すみません」が口癖だった方のこと

ある方が初回の予約をしてくれたとき、最初の30分で「すみません」を何度言っただろう。

数えていたわけではないけれど、フレンドからの報告にそう書かれていた。

「お時間取らせてしまってすみません」「こんな話、つまらないですよね、すみません」「あ、すみません、私ばっかり話して」

全部、謝る必要のないことだった。

その方は30代で、仕事も家事も一人でこなしていた。ご家族のことも少し話してくれたらしいが、詳しくは聞いていない。ただフレンドが言っていたのは「何かを頼むことに、ものすごく罪悪感を持っている方だと感じた」ということだった。

私はその報告を読みながら、少し手が止まった。

「頼る」と「迷惑をかける」が同じ引き出しにある人

一人で抱え込む人には、共通する感覚があるように思う。人に何かをお願いすること、自分の弱さを見せること、助けを求めること。その全部が「迷惑をかける」という一つの引き出しに入ってしまっている。

だから頼れない。頼らない、のではなく、頼るという選択肢が最初から消えている。

この仕事をしていると、そういう方に本当によく出会う。「一人でやらなきゃ」と思っているのではなく、「一人でやるしかない」と信じ込んでいる。その二つは似ているようで、全然ちがう。

前者には選択の余地がある。でも後者にはない。選択肢がないのだから、苦しいとも思えない。ただ、なんとなく毎日が重い。

私自身もそういう時期があった。離婚の調停をしていたとき、誰かに相談すればよかったのだろうけど、「こんな重い話、誰にもできない」とずっと思っていた。

相談しない理由を「相手に悪いから」と自分に言い聞かせていたけど、今思えば、弱い自分を見せるのが怖かっただけだ。たぶん。

話が少し逸れた。

ある方が3回目に見せた、小さな変化

さっきの「すみません」が口癖だった方は、3回ほど利用してくれた。

2回目のとき、フレンドが「今日は前回より少しだけ、自分の話をしてくれた」と報告してくれた。レンタルフレンドを繰り返し利用してくれる方には、こういう段階的な変化が起きることがある。→そのことはこちらにも書きました

そして3回目。その方がフレンドに言ったのは、こんな言葉だったという。

「職場で、初めて後輩に『ちょっと手伝ってほしい』って言えたんです」

フレンドはそれを聞いて、すごく嬉しかったと書いていた。私も嬉しかった。でも同時に思ったのは、「ちょっと手伝ってほしい」というたった一言を言うのに、この方はどれだけのエネルギーを使ったんだろう、ということだ。

頼ることは「練習」が要る

これは私の感覚だけど、人に頼るのが苦手な方にとって、レンタルフレンドは「頼る練習」の場所になっている面がある気がする。

お金を払っている。だから「お願い」しやすい。相手はそのためにいてくれる。その構造が、最初の一歩を軽くしてくれるのだと思う。

もちろん、それは練習のための場所であって、ずっとそこにいる必要はない。レンタルフレンドに頼ることが目的なのではなくて、頼るという感覚を思い出す入口になれたら、それでいい。→依存の心配については、こちらで正直に書いています

「ふたりしずかに」を利用してくれた方が、サービスの外で誰かに「手伝って」と言えるようになった。それは私たちの手柄ではない。その方自身の力だ。

でも、そこに至るまでの時間に少しだけ関われたことを、私は静かに誇りに思っている。

弱さを見せられる場所は、強さの入口かもしれない

うまく言えないけど、「頼る」ことは弱さじゃない。

こう書くと、きれいごとに聞こえるかもしれない。実際、頼れなくて苦しんでいる人に「頼っていいんだよ」と言ったところで、何も変わらない。言葉では届かないものがある。

だから私は「頼りなさい」とは言わない。ただ、こういう場所がありますよ、ということだけ、伝えておきたい。

人に頼れない自分を責めている方がいたら、知っておいてほしい。それは性格の欠点ではなく、あなたがずっと一人で頑張ってきた証拠だということを。

そして、その頑張りを少しだけ横に置ける場所が、どこかにあってもいいんじゃないかと、私は思っている。

まだ答えは出ていない。こういうサービスがどこまで人の助けになれるのか、正直、わからないことのほうが多い。でも、あの方が「手伝ってほしい」と職場で言えたという報告を読んだとき、胸の奥がじわっと温かくなった。それだけは、確かなことだった。

→次の話:卒業していった方のこと

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