「友人代表のスピーチ、誰に頼めばいいかわからないんです」
その相談が来たとき、私は正直すぐに言葉が出なかった。結婚式に関する悩みでこのサービスに連絡が来るとは、当時あまり想定していなかったからだ。
でもその後、似たような相談が複数あることに気づいた。結婚式と友人関係の問題は、内向的な方にとって、思った以上に切実なものだった。
「招待する友達が少ない」という不安
その方は30代前半だった。パートナーとの結婚が決まって、周囲からは「おめでとう」と言われている。本人も嬉しいはずなのに、式の準備が始まった途端に気持ちが沈んだ、と話していた。
理由は、招待客のリストだった。
相手側は友人が多い。大学のサークル仲間、職場の同期、学生時代からの親友。リストはすぐに埋まったらしい。
一方、自分の側はどうか。呼べる友達が、両手で足りる。もしかしたら片手で足りるかもしれない。
「新郎側は30人くらい友人がいて、私の側は5人です。テーブルのバランスが…」
そう話しているときの声は、少し震えていたとフレンドが報告してくれた。
結婚式の招待客の人数なんて、他人から見れば些細なことかもしれない。でもこの方にとっては、自分の人間関係の「少なさ」が目に見える形で突きつけられる場面だった。
それは祝福の場であると同時に、自分の人付き合いの履歴が公開される場でもあるのだと思った。
人数合わせの恐怖
この方が一番つらかったのは、プランナーから「人数のバランスを合わせましょう」と言われたことだったらしい。
悪気はなかったのだと思う。プランナーの仕事としては当然のアドバイスだ。でもそのとき、この方の頭には「人数を合わせるために、そこまで親しくない人にも声をかけなきゃいけないのか」という考えがよぎった。
数合わせのために連絡する。何年も会っていない人に「結婚式に来てほしい」と頼む。相手にとっては急な話だし、こちらにとっては気まずい。
結局、その方は人数合わせの招待はしなかった。「少ないままでいい」と決めたそうだ。でもその決断に至るまでに、かなり悩んだと言っていた。
友達が少ないことを、こんなふうに突きつけられる場面があるとは、私も想像していなかった。
結婚式は幸せなイベントだ。でもその幸せな場面の裏側で、友人関係に悩んでいる人がいる。それを誰にも相談できないでいる。
パートナーには「友達が少ないから式が不安」とは言いにくい。親にも、友人にも。だって祝われている最中に「実は友達がいなくて困ってる」なんて言ったら、場の空気が壊れてしまう。
友人代表スピーチという壁
招待客の人数とは別に、もう一つ相談が多いのが「友人代表のスピーチ」の問題だ。
ある方は、こう言っていた。「頼める人がいないわけじゃないけど、お願いするのが申し訳なくて」。
友人代表スピーチを頼むということは、相手にそれなりの負担をかけることになる。原稿を考えて、練習して、大勢の前で話す。それを快く引き受けてくれるほど親しい友人がいるかどうか。
いる人にはなんでもない話だと思う。でもいない人にとっては、かなり深刻な問題だ。
別の方は、スピーチ自体をなくす方向で式場と相談した。「友人の余興もスピーチもなしで、シンプルな式にしたい」と伝えたらしい。実際にはそれが本心だったわけではない。本当は、頼める相手がいなかっただけだ。
でも「いない」とは言えなかった。だから「シンプルにしたい」という理由にした。
こういう話を聞くたびに、私は少し胸が痛くなる。幸せな準備のはずなのに、自分の交友関係を隠すように段取りを進めなきゃいけない。その孤独は、結婚式が近づくほど深くなっていく。
付き添いとしてフレンドを使う方もいる
ここから先は、少し具体的な話になる。
結婚式そのものにフレンドが参列するケースは、今のところほとんどない。そこは誤解のないように書いておきたい。
ただ、結婚式の「準備段階」で相談相手として利用してくださる方はいる。
式場の下見に一人で行くのが心細かった方が、フレンドと一緒に見学に行ったことがあった。ドレスの試着に付き添いを頼まれたことも。以前、推し活の付き添いについて書いたけれど、こういうイベントの付き添いも、実は似た構造だと思っている。一人で行くことが物理的にできないわけではない。でも誰かがいてくれるだけで、気持ちの負担がぜんぜん違う。
その式場見学に同行したフレンドの報告に、こんな一文があった。「帰りにカフェで少し話したとき、初めて結婚式の不安を口にしてくれました」。
式場の下見という口実があったから、話せたのかもしれない。目的がはっきりしている場面のほうが、ふと本音がこぼれることがある。
結婚式が怖いのではなく、自分と向き合うのが怖い
これは私の推測だけど、結婚式の友人問題の根っこにあるのは、式の段取りそのものではないと思う。
「自分には親しい友達が少ない」という事実に、正面から向き合わなければならないこと。それが怖いのだと思う。
普段はなんとなくごまかせる。友達が少なくても日常は回る。仕事をして、家に帰って、週末を過ごして。誰にも「あなた友達何人いるの?」なんて聞かれない。
でも結婚式は、それを数字にしてしまう。招待客リスト。テーブル配置図。スピーチの依頼先。
全部が、自分の人間関係を数値化する作業だ。
私はこの仕事をしていて、友達が少ないことは問題ではないと思っている。何度もこのブログで書いてきた。でも、結婚式という場面においては、少ないことがそのまま「見えてしまう」。だから苦しい。
その苦しさを、パートナーと分かち合えたらいいと思う。でもそれができるなら、たぶんこのサービスを検索していない。
「人数のことが気になって、式自体をやりたくなくなってきた」と言った方がいた。結婚はしたい。パートナーのことは好きだ。でも式が怖い。
その方がフレンドと何度か話すうちに、少しずつ考えが整理されていったらしい。最終的には「小さい式にしよう」とパートナーに相談できたそうだ。少人数で、親族中心で、自分たちらしいやり方で。
それが正解かどうかはわからない。でも少なくとも、一人で抱えていた不安が、誰かに話したことで動き出した。私にはそう見えた。
利用の流れや予約の方法が気になる方は、こちらに詳しく書いています。
結婚式の悩みに限らず、「こんなことで連絡していいのかな」と迷っている方がいるなら、少しだけ言わせてほしい。どんな理由でも、話したいことがあるなら、それは十分な理由だと私は思っている。

