【オーナーコラム#1】この仕事を始めた日のこと少しだけ話させてください

【オーナーコラム#1】この仕事を始めた日のこと少しだけ話させてください

金曜の夜だった。

駅前のコンビニで缶コーヒーを買って、アパートに帰る途中のことだったと思う。

信号待ちをしていたら、向かいの居酒屋から笑い声が聞こえてきた。

窓越しに見える人たちが楽しそうにグラスを合わせていて、僕はそれを見ながら、ああ、今日も一人だなと思った。

別に寂しかったわけじゃない。たぶん。

でも、あの夜のことは覚えている。缶コーヒーのプルタブを引く音が、やけに大きく響いたことも。

目次

あの頃、僕が抱えていたもの

レンタルフレンドの運営をしている、と言うと、だいたい「なんでまたそんなことを?」という顔をされる。

無理もないと思う。

僕自身、数年前にこういうサービスがあると知ったとき、正直ピンとこなかった。

  • 友達を借りる?
  • お金を払って誰かと過ごす?

そんなの必要な人がいるんだろうかと、どこか他人事だった。

でも、自分が当事者になったとき、見える景色はまったく違った。

離婚の調停をしていた頃のことだ。

仕事ではパワハラに追い詰められていて、家に帰ればモラハラの問題と向き合わなければならない。

眠れない夜が続いて、朝が来るのが怖かった。

友人はいた。でも、こんな話を誰にできる?

「離婚しそうなんだ」と切り出すことの重さが、わかるだろうか。

相手の表情が変わるのが怖い。心配をかけるのが申し訳ない。

なにより、言葉にした瞬間、それが本当のことになってしまう気がして、口が動かなかった。

結局、僕は一人で抱えた。

あのとき誰かがそばにいてくれたら、と今でも思う。解決策を教えてほしかったわけじゃない。

正しいことを言ってほしかったわけでもない。ただ、黙って隣にいてくれる人がいたら。

「大変だったね」のひとことで、たぶん僕はもう少し早く眠れたんじゃないかと思う。

相談できなかった理由

不思議なもので、つらいときほど人に頼れなくなる。

僕の場合はそうだった。周りに迷惑をかけたくないとか、弱い自分を見せたくないとか、そういう気持ちが邪魔をして、「大丈夫」と笑ってしまう。

聞いてほしいのに、聞いてほしいと言えない。その矛盾が一番しんどかった。

あとになって知ったのだけど、こういう感覚を持っている人は、想像していたよりずっと多い。

特に、内向的な性格の人に多いらしい。自分の中で考えを整理してからでないと話せない。

だから相談するタイミングを逃す。逃しているうちに、もう大丈夫なふりが上手になってしまう。

僕は男だから、また少し事情が違ったかもしれない。

でも、この仕事を始めてから出会った女性たちの話を聞いていると、「ああ、同じだ」と感じることが何度もある。

「内向的な女性専用」にした理由

レンタルフレンドというサービス自体は、すでにいくつもある。

男女問わず利用できるもの、イベント同行がメインのもの、さまざまだ。

後発の僕が同じことをやっても意味がないし、そもそも僕がやりたいのはそういうことじゃなかった。

女性向けマッサージのセラピストをしていた時期がある。正確には今もやっている。

その仕事を通じて、たくさんの女性の話を聞いた。施術の合間に、ぽつぽつと語られる言葉。仕事のこと。家族のこと。誰にも言えなかった小さな、でも本人にとっては大きな悩み。

共通していたのは、みんな我慢していたということだ。

「こんなこと話してすみません」と何度言われただろう。

話してくれたことに感謝しているのは僕の方なのに、なぜか謝られる。

その「すみません」の裏にあるものが、僕にはわかる気がした。

  • 話を聞いてほしい。
  • でも、迷惑じゃないか不安。
  • 自分の気持ちを言葉にしたい。
  • でも、うまく話せない自信がない。
  • 人と一緒にいたい。
  • でも、気を遣うのに疲れた。

この矛盾を、矛盾のまま受け止められるサービスを作りたかった。

だから「内向的な女性専用」にした。

ターゲットを絞ったとか、マーケティング的な判断だとか、そう思われるかもしれない。

でも、これは僕の感覚から出た答えだ。あの頃の僕自身が必要としていたもの。

そして、仕事を通じて出会った女性たちが、言葉にできずにいたもの。それを形にしたかった。

フレンドに求めたこと

サービスを始めるにあたって、一緒に働いてくれるフレンドを探した。

僕がこのサービスで絶対にやらないと決めたことがいくつかあって、それをそのままフレンドの採用基準にした。

明るくしましょう、とは言わない。 アドバイスを押し付けない。 無理にしゃべらせない。

「何もしない」ことが、ときに一番むずかしい。

でも、この仕事で大切なのは、相手のペースに合わせて黙っていられる力だと僕は思っている。

医療や介護、教育の現場を経験してきた人たちに声をかけた。

資格があるからいい、という話ではなくて、人の話を「聞く」ことの重みを身体で知っている人が必要だったからだ。

採用にはすごく時間がかかっている。年単位で探すこともある。

でも、ここを妥協したら、サービスの根っこが崩れる。

名前のこと

「ふたりしずかに」という名前の由来は、別のコラムで改めて書こうと思う。

ここでは少しだけ。

二人でいるのに、静かでいい。沈黙が気まずくない。何かを話さなきゃと焦らなくていい。そういう時間を、僕は作りたかった。

友達といても疲れる。人といると気を遣う。でも一人は寂しい。

この「でも」の先にある場所を、名前にした。ちょっと恥ずかしいけど、今も気に入っている。

このコラムのこと

このコラムでは、僕がこの仕事を通じて見てきたこと、感じたこと、考え続けていることを書いていく。

サービスの宣伝をしたいわけじゃない。というか、たぶん宣伝は下手だと思う。

ただ、もしあなたが今、一人で何かを抱えていて、それを誰かに話したいのに話せなくて、こんなサービスを検索している自分に少し後ろめたさを感じているなら。

その気持ちを、僕はおかしいとは思わない。

検索してくれたこと、このページを開いてくれたこと。それだけでもう、十分だと僕は思う。

ここから先は、僕がこの仕事で出会った人たちの話を少しずつ書いていく。

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