【オーナーコラム#37】内向的なまま自分の世界を広げていく人たち

【オーナーコラム#37】内向的なまま自分の世界を広げていく人たち

「この方、変わりましたね」。

フレンドから、そう報告を受けることがある。でも私は「変わった」という言い方にいつも少し引っかかる。

外向的になったわけじゃない。人見知りが治ったわけでもない。口数が増えたかと言えば、そうでもない方のほうが多い。

でも確かに、何かがちがう。

この章では、利用者の方に起きた小さな変化について書いてきた。3回目に笑った方。職場で雑談ができるようになった方。一人の時間が「怖い」から「好き」に変わった方。自分を少しだけ好きになれた方。人に頼ることを覚えた方。「もう大丈夫です」と卒業していった方。

どの方も、性格が変わったのではないと思う。内向的なまま、世界との距離感だけが少し変わった。そんなふうに見えた。

目次

外向的にならなくても、人生は動く

この仕事を始める前、私はどこかで「内向的な人は、少しでも外向的になったほうが楽になる」と思っていた。それが善意からくる考えだったとしても、今はちがうと感じている。

利用してくれた方たちを見ていて気づいたのは、人間関係が豊かになるのと外向的になるのはまったく別のことだ、ということだった。

たとえば、月に1回カフェで話すだけで十分だという方がいる。その方にとって、「ふたりしずかに」のフレンドと過ごす2時間が月に一度あるだけで、残りの29日がちょっとだけ軽くなるらしい。

友達が10人いる必要はない。毎週末に誰かと出かける必要もない。自分にとってちょうどいいつながりの量と距離がある。それを見つけた人は、静かだけれど、どこか安定している。

以前、「人見知りは直すもの」という思い込みについて書いた。→その話はこちらで あの呪いを解いた先にあるのは、外向的な自分ではなくて、内向的な自分のまま世界と関わる方法を見つけることなんだと、今は思う。

広がるのは「範囲」ではなく「選択肢」

世界を広げる、と聞くと、行動範囲が広がるとか、交友関係が増えるとか、そういうことを想像するかもしれない。

でも私がこの仕事で見てきた「広がり」は、もっと地味なものだ。

「今日はちょっと話したい気分だな」と思えるようになること。「今日は一人がいいな」と罪悪感なく思えること。頼りたいときに頼れる場所があると知っていること。

選べるようになるということだと思う。

以前は「一人でいるしかなかった」が、「一人でいることを選んでいる」に変わる。外から見たら何も変わっていないのに、本人の中ではぜんぜんちがう。

ある方が言っていた。「休日に一人でカフェに行く時間が、前より好きになりました」と。その方は、利用を始める前も一人でカフェに行っていたそうだ。やっていることは同じ。でも気持ちが変わった。

「誰かに話を聞いてもらえる場所がある」と知っているだけで、一人の時間の質が変わる。これは私の仮説だけれど、利用者の方の話を聞いていると、あながち間違っていない気がする。

共通していたのは、「自分を責めなくなったこと」

変化した方たちに共通点があるとすれば、自分を責める頻度が減ったことだと思う。

「友達が少ない自分はダメだ」「人見知りを治さなきゃ」「一人でいるのは負けだ」。そういう声が、少しずつ静かになっていった。

ここで誤解してほしくないのは、私たちが「自分を責めなくていいですよ」と言い続けたわけではない、ということだ。言葉でそう伝えることはある。でも、変化のきっかけは言葉ではなかったように見える。

たぶん、何度か人に受け止めてもらう体験を重ねるうちに、「自分はこのままでもいいのかもしれない」と、自分で気づいていくのだと思う。外から教えられたのではなく、自分の内側から出てきた感覚。だからこそ定着する。

これは私の推測でしかない。証明する方法はないし、全員にそういう変化が起きるわけでもない。1回で合わないと感じて終わった方もいる。数回利用しても、特に何も変わらなかったという方もいるはずだ。

でも、「変わった方」に共通していたのは、外に向けて変わったのではなく、内側の自己批判が少し穏やかになったことだった。これだけは、フレンドからの報告を何十回と読んできた中で、繰り返し感じたことだ。

私自身もずっと考えている

正直に言うと、このテーマについて私はまだ結論が出ていない。

内向的な人がそのままで生きやすい社会を、と思ってこの仕事を始めた。でも「そのままでいい」という言葉が、ときどき無責任に聞こえることがある。

現実には、外向性を求められる場面はいくらでもある。就職活動、職場の飲み会、ご近所づきあい。「そのままでいい」と言ったところで、社会の側が変わるわけではない。

だから私は、「そのままでいい」の先をずっと考えている。

そのままの自分で、どうやって社会と折り合いをつけていくか。どこで無理をして、どこで無理をしないか。その判断を一人でしなくていい、ということが、もしかしたら一番大事なのかもしれない。

ふと思い出したのだけど、先日ニュースで「孤独担当大臣」の話を見かけた。孤独が社会問題になっている、ということは、裏を返せばそれだけ多くの人が一人で抱えているということだ。内向的であることと孤独であることはイコールではないけれど、つながりの薄さが放置される構造は共通している。

話が大きくなりすぎた。

内向的なまま、ここにいていい

この章で書いてきたことを振り返ると、結局、どの方のエピソードにも共通していたのは「外向的にならなかった」ということだと気づく。

誰も社交的になったわけじゃない。パーティーが好きになったわけじゃない。人見知りが治ったわけでもない。

でも、少し楽になった。少し自分を許せるようになった。少しだけ、誰かに頼ることを怖がらなくなった。

それは「変わった」と言えるのかもしれないし、もともとその方の中にあったものが表に出てきただけかもしれない。私にはわからない。

わからないけれど、見てきた。内向的な人が内向的なまま、自分の世界を少しずつ広げていく姿を。それは静かで、目立たなくて、でもとても力強いものだった。

このコラムを読んでくださっているあなたにも、いつか直接伝えたいことがある。→それはこちらに書きました

次の章では、少し話が変わる。転勤や育児、結婚式、病院のつきそい。内向的な方が「困った」と感じる具体的な場面について、書いていこうと思う。

→次の話:転勤先で知り合いゼロ。そんな方にこのサービスを使ってほしい理由

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